「慰謝料」のこと
2017.06.26 Monday
「慰謝料いくらとれますか?」
このように相談される方がけっこう多いのは、「慰謝料」という言葉がよく知られているからなのでしょうね。
ただ、言葉が一人歩きしている感じもうけます。
例えば、こんな誤解が多いです
○浮気や暴力をした人は、慰謝料を支払わないと離婚できない
○夫から離婚を突きつけられたとき、妻は慰謝料を請求できる/慰謝料は夫が妻に支払うもの
○慰謝料には相場がある
○慰謝料の金額は、300万円くらいだ(もしくは、もっと高額)
○不倫相手には、かならず慰謝料を請求できる
○籍を入れていないと不倫相手には慰謝料を請求できない
まず、法律上、慰謝料を支払わないと離婚できないという規定もなければ、逆に慰謝料を支払えば離婚できるという決まりもありません。
離婚自体は、慰謝料の取り決めなくできますので、離婚後に請求することもできます(基本的には3年以内)。
ただ、実際には離婚届にサインしてもらったり、裁判所での離婚を成立させるために、慰謝料を渡して納得してもらうことがよくあります。
また、どんな時でも認められるというわけではありません。
慰謝料というのは、精神的な損害に対するつぐない金ですから、離婚を突きつけられたときにはいつでも請求できそうなものですが、裁判所は一定の類型的な場合(暴力、浮気、悪意の遺棄など)に慰謝料を認めるのが通常です。
よくある性格の不一致のみでは基本的には慰謝料は請求できません。
くわえて、調停の場合には、調停委員は慰謝料に対して消極的な場合が多く、相手が拒否しても慰謝料を取りたいときには裁判をすることが必要になり、大変だと思って諦めてしまう方もいます。
それから、慰謝料の金額は法律で決まっているわけではなく、裁判のときには裁判官が決めますし、裁判外で決めるときには、当事者の合意(双方が納得してOKすること)で決まります。
裁判官がいくらくらいの判決を書くかについては、経験上アドバイスすることはできるのですが、協議離婚や調停では相手方との交渉により決まるので、相場はあってないようなものなのです。
ひどい事案でも、相手にめぼしい財産がない場合、事実上取れないという場合もあります。逆に、芸能人の離婚で時々もの凄い金額が支払われるのも、そういう話し合いがまとまったからです。
一般的に、金額を決める基準としては
*相手の身体や心の苦しみが大きいほど金額が高い
*離婚原因の内容がひどければひどいほど金額が高い
*結婚の期間が長いほど金額が高い
*支払う側に資力があるほど高く、逆に支払われる側に資料がないほど低い
*財産分与の金額が高い場合には低いこともある
などのだいたいの傾向はありますが、他にも破綻に至る経緯や婚姻中の協力度、子の有無・年齢など様々な要因を総合的に考慮して決めます。
さらに、籍が入っていても、長期間別居していてすでに夫婦関係が壊れていたという場合には、夫・妻が恋人を作っても、慰謝料が発生しないという場合もありますし、事実婚・内縁の場合でも浮気をすれば法律婚と同じように慰謝料を支払わなければならないときもあります。
ちょっと話がややこしいですね^^;
要はケースバイケースのことが多いのです。
もう一つ、申し上げたいことは、離婚するときに慰謝料ばかりがクローズアップされますが、忘れてはいけないのが「財産分与」「年金分割」です。これにより、慰謝料以上の金額をもらえる場合もあるのです。
今はインターネット上で色々な情報が流れているようです。
残念ながら不正確な情報で行動され、マイナスになっている方もいらっしゃるので、ご自分にとって大事な時にはちゃんとした知識でのぞみたいですね。
- 法律コラム
- 12:58
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